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ぶ ん か ざ い ほ ご が か り
その8 文化財保護係って?(2)

 前回は、町にある文化財の種類と、その中の「建造物」や「樹木」の保護・保存についてお話しました。今回は、「遺跡」の保護・保存についてお話します。

遺跡の保護・保存

 さて、遺跡は土の中に埋もれているので、雨や風の影響はほとんどありませんから、まったく手のかからない文化財のように思われます。ところが、他でもない私たちの生活が、遺跡の保存を脅かすことがあるのです。

 土の中に埋もれている遺跡は、一度地面を掘り返すと壊れてしまい、二度と元に戻すことができないのです。ですから、私たちが家やお店などの建物を建てたり、道路や下水道を作ったりする時に行なう開発は、遺跡を壊してしまう可能性があるのです。

 蔵王町で発見されている遺跡は約200か所(詳しくは、「蔵王町の遺跡」のページをご覧ください)。水はけの良い高台だったり、日当たりの良い南向き斜面だったり…。昔も今も、良い土地の条件は変わりません。もう一つ、水場に近いということは昔の人々にとっては絶対にはずせない条件でした。これは水道の整備された現代ではほとんど関係ありませんね。

 ともかく、遺跡のある場所は「良い土地」であることが多いので、現在の私たちの生活に必要な工事や開発が、遺跡のある場所で行われることが多いのです。このような場合には、どうしたら良いのでしょうか? 遺跡を守るために、工事や開発は禁止されてしまうのでしょうか?

 その答えは、「文化財保護法」という法律の中で決められています。要約すると、「文化財は、私たちの国の歴史や文化を正しく理解するために重要なものなので、大切に保存していくこと」とされています。ですから、道路などを造るときにも、できるだけ遺跡のある場所を避けて計画してもらいます。ところが、どうしても遺跡を避けることができない場合もあります。

遺跡を記録に残す発掘調査

 そのような場合には、遺跡の中で壊れてしまう部分を工事の前に発掘調査して、そこにどのような遺跡が埋もれていたのかを細かく記録に残します。遺跡が壊れてしまう代わりに、その遺跡を写真や図面による「記録」という形で保存するのです。

 このように、遺跡のある場所でさまざまな開発を行なう場合の相談をさせていただくことも、係の仕事です。皆さんも町内で家を建てたりするときには、その土地が遺跡かどうかを事前に係へご相談くださいね。

 現在、小村崎地区では水田を大きく使いやすいものに作り替える工事が行なわれています。小村崎地区は町内有数の遺跡密集地帯です。係では、この工事で失われてしまう遺跡の発掘調査を行なっています。「発掘調査速報」のページでお伝えしているように、たくさんの発見があります。失われてしまう遺跡から、ひとつでも多くのメッセージを読み取ることも係の大切な仕事なのです。

 発掘調査では、2名の職員のほかに考古学の専門知識を持った4名の臨時職員と、30名ほどの地元発掘作業員の皆さんが活躍しています。特にこの季節、炎天下にもなる野外作業は、まさに体力勝負。とても大変な作業ですが、休憩のときには井戸端会議に花が咲きます。

見つかった遺構(昔の建物の柱を立てた穴や井戸、溝の跡など)を平面図に記録していく作業。どのような建物が並んでいたのかが分かります。 昔の建物の柱を立てた穴の半分を掘り下げ、断面図に記録する作業。使われていた柱の太さなどを知る手がかりになります。
発掘調査のほとんどはスコップを使った土木作業。パワフルな作業員の皆さんが活躍しています。 休憩のひとコマ。
<つづく>

2009年8月12日更新<M>

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