|
|
き ゅ う せ っ き じ だ い |
|
|
|
|
日本列島の旧石器時代は、人類がユーラシア大陸から日本列島へ移住してきたときから、縄文時代が始まるまでの間を言います。日本列島が大陸と陸続きだった数十万年前に渡ってきたゾウやマンモスなどの化石が発見されていることから、人類の足跡もその頃にさかのぼると言われていますが、まだ確実な証拠は見つかっていません。
今のところ日本列島で見つかっている最も古い遺跡は、今から約3万5千年ほど前のものです。縄文時代の始まりを告げる土器の出現は約1万4000年ほど前と考えられているので、日本列島の旧石器時代は約2万数千年間続いたことになります。
旧石器時代の気候は現在よりも寒冷でした。最も寒冷だった約2万年前には年間の平均気温が現在よりも7〜8度も低く、宮城県周辺は現在の北海道東部のような気候で針葉樹林に覆われていたようです。
当時の人びとは、主に狩猟によって食料を得ていました。野牛やナウマンゾウといった大型動物や、ニホンシカ、イノシシ、ノウサギなどを石槍などの石器で捕らえたと考えられています。当時の遺跡から見つかるのは石器のみで、住居の跡はほとんど見つかっていません。彼らはキャンプ生活で移動を繰り返しながら動物を追う狩人だったのです。
蔵王町でも、宮地区の持長地(もっちょうじ)遺跡、鉄砲町(てっぽうまち)地区周辺、小村崎地区の前戸内(まえとうち)遺跡などで旧石器時代の人びとの生活の痕跡がわずかながら発見されています。
|
持長地遺跡で出土したナイフ形石器
(長さ4.5cm、珪質頁岩製、宮城県教育委員会蔵) |
|
鉄砲町地区周辺で採集された彫刻刀形石器
(長さ14.0cm、珪質頁岩製、東北大学蔵) |
|
前戸内遺跡で採集された槍先形尖頭器
(長さ11.0cm、珪質頁岩製、個人蔵) |
持長地遺跡では、「ナイフ形石器」と呼ばれる石器が出土しています。柄に取り付けて動物を突き刺したりする槍や、文字通りナイフのようにして使われたものです。
珪質頁岩(けいしつけつがん)を縦長に割り取った「石刃(せきじん)」の一部に刃つぶし加工をした「茂呂型ナイフ形石器」と呼ばれる種類のもので、関東地方の約1万7千年ほど前の遺跡で出土しているものと同じ技法で作られています。
鉄砲町地区周辺で採集された「彫刻刀形石器」は、木や骨を削る道具として使われたものです。槍を取り付ける柄や、骨角器の製作に使われたのかもしれません。
珪質頁岩を縦長に割り取った大振りの「石刃」の側面に刃を設けた「小坂型彫刻刀形石器」と呼ばれる種類のもので、山形県などの約2万年ほど前の遺跡で出土しているものと同じ技法で作られています。
前戸内遺跡を流れる沢筋で採集された「槍先形尖頭器(やりさきがたせんとうき)」は、柄に取り付けて石槍として使われたものです。旧石器時代の終わりごろから縄文時代の初めに見られる石器で、ナイフ形石器よりも大きく、より精緻な加工が施されています。
こうして見ると、たった3点の石器でも、日本列島のほかの地域の研究とあわせて考えると、当時の人びとの生活や地域を越えた交流の様子を垣間見ることができます。
ここに紹介した3点の石器は、どれも珪質頁岩で作られていますが、これは宮城県内ではほとんど産出しない石で、山形県の最上川流域などに多く産出します。この点だけを見ても、当時の人びとが奥羽山脈を越えて移動していたか、あるいは太平洋側の人びとと日本海側の人びとが物資の交換などの交流を持っていたことを示しているのです。
また、蔵王町の東側に隣接する村田町の新川(にっかわ)流域では玉髄(ぎょくずい)が産出し、旧石器時代の人びとがこれを利用して石器づくりをした痕跡が点々と発見されています。このように原石の産地に残された石器づくりの跡を「原産地遺跡(げんさんちいせき)」と呼びます。新川流域の原産地遺跡で作られた石器を携えた人びとが動物を追い求めて活躍した痕跡が、蔵王山麓の随所にまだまだ眠っているのかもしれません。
|
(写真と図は「蔵王町史 資料編T」より引用しました)
|
|
|
|
|
|
|
持長地(もっちょうじ)遺跡 |
所在地 |
: |
蔵王町宮字持長地 |
時代 |
: |
後期旧石器時代後半 |
遺物 |
: |
ナイフ形石器1点(黄褐色ローム漸移層下部) |
鉄砲町(てっぽうまち)地区周辺 |
所在地 |
: |
蔵王町宮字沢田 |
|
|
※石器が採集された地点はこれまで「鉄砲町」(現在の宮字坂山、坂下地内)とされてきましたが、近年になって「吾戸囲」(現在の宮字沢田地区周辺)であることが判明しました。 |
時代 |
: |
後期旧石器時代 |
遺物 |
: |
彫刻刀形石器1点(採集) |
前戸内(まえとうち)遺跡 |
所在地 |
: |
蔵王町小村崎字前戸内 |
時代 |
: |
後期旧石器時代後半〜縄文時代草創期 |
遺物 |
: |
槍先形尖頭器1点(採集) |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
・ |
いずれの遺跡も標柱等は設置されていません。遺跡の現状は水田・畑地・宅地などです。 |
|
|
|
|
|
|
持長地(もっちょうじ)遺跡 |
|
鉄砲町(てっぽうまち)遺跡 |
|
前戸内(まえとうち)遺跡 |
|