昨年7月から進めていた谷地遺跡の発掘調査が、このほど終了しました。調査の結果、縄文時代の竪穴住居跡や食料などを保存した貯蔵穴、土器などの不要になった生活用具を廃棄した捨て場遺構などが発見され、整理箱(60cm×45cm×15cm)にして土器・土製品類が約450箱、石器・石製品類が約150箱、合計600箱という膨大な量の遺物が出土しました。
出土した縄文土器は大木7b・8a式と呼ばれる、縄文時代中期前葉(今から約5000年前)のものが主体ですが、同時期の関東地方など遠隔地の土器型式に属するものが含まれているようです。石器は自然の河原石を利用した大型の石皿や磨石のほか、日本海側の珪質頁岩という石を利用した石鏃や石錐、箆形石器などが多数出土しました。比較的大型の打製・磨製石斧の優品も見られます。これらは、当時の人びとの日常の生活様式や他地域との交流関係などを知ることのできる貴重な資料です。
また、谷地遺跡の調査成果で特筆されるのは、捨て場遺構の存在です。自然の窪地や使われなくなった住居跡の窪みを利用した捨て場遺構からは、日常生活で使われた多数の土器や石器に混じって、50点を超える土偶やさまざまな土製品、ヒスイ製の垂飾品や異形石器など、日常生活とは異なる祈りやまつりで使われたと思われる遺物が数多く出土しました。土器も壊れたものばかりではなく、完全な形に復元されるものが多数含まれています。このため、捨て場遺構は当時の人びとにとって単に不要なものを廃棄した埋め立て地ではなく、さまざまな節目に役割を終えた道具たちに感謝し、再びムラの生活を豊かにしてくれることを願う「送りの場」であったことが窺われます。
このことから、今回の発掘調査地点は谷地遺跡の縄文ムラの中でも人々の精神性に関わる重要な場所であり、縄文人の「こころ」をうかがい知ることのできる調査成果と言えるでしょう。今後は発掘調査で見つかった住居跡などの遺構の図面整理や、出土した遺物の洗浄や復元、観察などを進めていきます。この整理作業が進めば、谷地遺跡の縄文ムラに暮らした人びとの生活がさらに具体的に解明されていくことでしょう。
これまでの発掘調査の様子や、今後の整理作業の様子はは「どきたんのドキドキWEB日誌」でもお知らせしていきます。これからもどんな発見があるかお楽しみに! |