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話し手
編 集 |
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加川清八(蔵王町向山区)
蔵王町教育委員会(2010) |
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※このお話は、「ブナ堂さん」の後編です。前編をお読みになっていない方は、先に「ブナ堂さん」(前編)をお読み下さい。
次の日、みんなは知恵をしぼって、ブナの周りでたき火をおこしたんだ。そして、できた木っ端をすぐ火にくべたんだ。
木っ端は伐り口くっつくことができなくなって、そのまんま燃えてしまったんだと。
八人の樵に伐りたてられて、さすがのブナの大木も今にも倒れそうになり、まるで泣くように「ギギギー、ギギギー」と揺れたんだと。
日も暮れてきたころ、ついにブナの大木は大きな音を立てて、あたりを震わせて倒れたんだと。
その時、ブナのところから、「ギャーッ」という叫びとも、鳴き声ともつかねえ声と一緒に、頭に角を生やし、青い目を光らせ、真っ赤に口の裂けた化け物が、おっきな羽根広げて舞い上がって、ボタボタと血を落としながら東の空へ飛んで行ったんだと。
みんなはおっかなくて、地べたさ突っ伏していたんだと。
こうして、ブナの大木の命が尽きたんだと。
次の日になって、点々と続く血をたどって行くと、隣村の金ヶ瀬(かながせ)の堤(つつみ)まで続いていて、化け物は田んぼの中で死んでたんだと。
この化け物との関わり合いはよくわがんねぇけども、今でも、金ヶ瀬の堤には角神さんという神社があるんだ。
ブナの大木を伐り倒した跡には、いつの頃からかほこらが祀られるようになったんだ。それがブナ堂さんなんだ。
ブナ堂さんのほこらは石でできてるんだけども、屋根は藁葺きのように刻まれている珍しいほこらなんだ。
九月十九日には、昔のことがわかっている年寄りたちが、酒や肴を持ってお参りしてたんだけど、それもなくなって、ブナ堂さんのほこらは今も草の中にあるんだとさ。
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※「蔵王町史 民俗生活編」掲載の「ブナ堂さん(話し手:加川清八さん)」に基づき、その内容・意味・趣旨に変更を加えることなく、文体修正・一部文章修正を行いました。
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2010.8.10更新 |
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