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な っ と う お し ょ う |
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話し手
編 集 |
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佐藤新治さん(蔵王町円田)
蔵王町教育委員会(2009) |
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むかし、あるところに、えらい和尚さんがいたそうだ。あるとき小僧に「今年は寺でみそを仕込むから、豆を二斗ほど煮てくれや。」と言いつけたんだと。そんで、さっそく用意をはじめた小僧に「おれはちょっと用事があるから、後は頼む。」と言って、寺を出て行ったんだと。
んでも、和尚さんは、その日は戻らなかったんだと。その日だけでなく、次の日も、その次の日も戻らなかったんだと。小僧は、心配で仕方なかったけど、どうすることもできないで、ただ待ってたんだと。四日目になって、「いやいや、用事がたくさんあってすっかり長宿りしてしまった。」と言いながら、和尚さんが帰ってきたんだと。
和尚さん、留守の間に小僧に煮させていた豆のことが気がかりになって、鍋のふたを開けてみたらば、なんと、煮豆はベッタリとひとかたまりになっていて、白いカビみたいなのが吹いて、すっかり腐れてしまったようになっていたんだと。和尚さんはびっくりして、自分が長宿りしてしまったことを悔いたんだけど、それでも、もったいないから少し食ってみようと、塩をふって食ってみたら、びっくりするほどおいしかったんだと。小僧にも食わせてみたら、小僧も、たいへんうまいと言ったんだと。それで、はじめに鍋のふたを開けたときに「なんと」とびっくりしたので、これを「なんと」と呼んで、たくさんの人に食ってみるように勧めたんだと。そのうち、「なんと」がなまって「なっとう」になったんだと。
和尚さんは、煮豆を数日置いておくと、また別な味の食べ物に変わるんだと言うことを知って、大きな失敗が、大きな発見につながることもあるんだと悟ったんだとさ。 |
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※「蔵王町史 民俗生活編」掲載の「納豆和尚(話し手:佐藤新治さん)」に基づき、その内容・意味・趣旨に変更を加えることなく、文章の順番・文体のみ修正しました。
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2009.5.29更新 |
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