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あ さ ひ や ま
朝日山のきつねっこ(1)

話し手
記 録
編 集


不明
平沢青年会(1984)
蔵王町教育委員会(2009)

 むかしは、平沢(ひらさわ)の朝日山のあたりにはキツネ穴があって、あったかい日には子犬ほどの大きさのキツネが穴から出てきて相撲をとったり、馬のしっぽにちょっかいをかけて遊んだりしていたものだった。そんなキツネたちだから、里の人たちにいたずらをしかけたり、悪さをしたりすることもしょっちゅうだった。

 ある時、目の不自由な男がフゴ(魚を入れるための編みカゴ。「びく」のこと)にドジョウを入れて肩に担いで、円田山(えんだやま)の方から歩いてきたときのことだった。朝日山まで来たところで、後ろから「すまんが、小用を足すあいだ、この鍬を担いでいてくれんかね」と声をかけられた。男は、聞き覚えのない声だなと思いながらも、応じて鍬を担いでやった。すると、近くで仕事していた里の人たちが「お〜い、そのキツネを地面にたたきつけろ!早く、早く!」と、大声でどなっているではないか。何のことかわからずにいたが、「キツネが鍬に化けて、お前さんのフゴに頭突っ込んでるぞ!」と、どなられて、はじめてキツネに化かされてドジョウを食われてしまったことに気付いた。男は、担いでいる鍬を思い切り地面に叩きつけてやった。鍬は「キャッ」と叫び声を上げて、キツネに戻って逃げていった。鍬の柄だと思って握っていたのは、どうやらキツネのシッポだったようだ。
 またある時、今度は別の男が、川崎の親戚からドジョウをいただいて川崎から四方峠(しほうとうげ)を越えて花町(はなまち。旧猿鼻宿。現在は平沢字町尻という集落)に向って歩いていたときのことだった。見覚えのある若衆と娘っこが、手に手を取り合って笹小屋(ささごや。炭焼きなどの山仕事をするときにこしらえる、仮住まいの小屋。壁や屋根を笹でこしらえるので、笹小屋と呼ばれる)の中に入っていくのが見えた。男が、いったい何事かといぶかしがり、笹小屋に近づいて引き戸を開けようとしたとたん、「ひひひん!」という馬のいななきがしたと思ったら、何かものすごい力をくらって後の方に飛ばされてしまった。せっかくいただいてきたドジョウも、ぶちまけられて台無しになってしまった。なんのことはない、ドジョウを狙ったキツネが男をばかしたのだった。実は、男が笹小屋の引き戸と思い込んだのは馬の尻で、いきなり尻を広げられたのにびっくりして男を蹴っ飛ばしたのだった。キツネはまんまとドジョウにありつくことができたのだった。
(平沢青年会「平沢むかしむかし」より抜粋・再編集)

※「平沢むかしむかし」掲載の「朝日山のきつねっこ」のうち「四方峠のむじな石」部分を削除したものについて、意味・趣旨に変更を加えることなく再構成したものです。
※「朝日山」は、現在の地名で言うと「平沢字諏訪舘(すわだて)」の一部にあたります。ちょうど「字諏訪舘」「字長窪(ながくぼ)」「字八ヶ屋敷(はっけやしき)」の間あたりです。
2009.5.8更新

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