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ひ ら さ わ み だ の す ぎ
その7 「平沢弥陀の杉」のだるま


 昨年、支幹が折れた宮城県指定天然記念物「平沢弥陀の杉」。折れたのは最も細い支幹とはいえ、その根元直径は60cm以上、全長20m以上!並の杉の木以上の大きさです。でも、折れてしまったものは仕方ないということで、次に考えるは「これ、何かに活用できないかしら?」ということ・・・。

 一方、わが町は「伝統工芸 遠刈田こけし」の産地として有名な町です。今日も多くのこけし工人さんたちが、こけしやだるま、木地玩具などの製作に腕をふるっています。そうなると、わが町ならではの木材活用方法として「木地製品」が思い浮かぶのは、ごく自然な成り行きですよね。

 ましてや、「平沢弥陀の杉」の別名は「だるま杉」。これはもう、「だるまを作れ!」と言われてるようなもんです。ということで、平成21年度から2ヵ年にわたって実施される、「平沢弥陀の杉周辺整備事業」を記念して「平沢弥陀の杉だるま」を製作していただきました! 工人さんは、遠刈田こけし工人組合組合長にして、瑞宝単光章受章者 佐藤哲郎氏。製作しただるまは5個。すべて「平沢弥陀の杉周辺整備事業」でお世話になる団体・組織に、事業実施者である平沢歴史の郷づくりの会からの記念品として進呈されました。

 佐藤氏のお話では、木が折れた時期が樹体に水分が多く含まれる初夏だったため、その後の乾燥中に材に微細なひび割れが生じてしまったのだとのこと(普通の伐採時期は冬。木が休眠している時期でないとうまく乾燥しないのだとのこと)。また、杉材は木目と肉の硬さが極端だそうで、かなり挽きにくいのだそうです。いくつもの悪条件にもかかわらず、美しい木肌に仕上げ、活き活きとした筆使いでだるまを描いていただいたのです。木目鮮やかにして、杉特有の芳香もかぐわしい逸品です。

 「木は、2つの命を持っている。ひとつめの命は、その木が生まれてから、折れたり枯れたり、あるいは伐採されたりするまでの、生き物としての命。そしてもうひとつの命は、その木が家具や道具、建築材などに加工された後の、素材としての命だ。」・・・そんな言葉を聞いたことがあります。今回折れた弥陀の杉の支幹は、細いとはいえ、少なくとも150年以上は生き続けてきた、弥陀の杉の身体の一部です。それは、とても悲しいことです。しかし、それを材として「だるま」が製作されました。折れて命を失った支幹に、あらたな命が与えられたのです。とても素晴らしいことだと思います。願わくば、あらたな命を授かった「弥陀の杉たち」が、末永く愛され、大切にされますように・・・。

背面には、「平沢弥陀の杉周辺整備事業記念 叙勲受章者 佐藤哲郎」の墨筆がある。

2009年8月3日更新<Y>


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