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もとの平六

話し手
編 集

佐藤良三(蔵王町塩沢)
蔵王町教育委員会(2010)

 平六さんは結婚のとき、姉さんから和紙のフンドシをご祝儀にいただいたそうだ。
 このフンドシは殿様や金持ちだけがする高級なもので、和紙織りだから、洗濯してはならないっていわれたんで、平六さんは長い間このフンドシを洗わずにしめておったら、そのうち、天候がかわるときは湿ってきて、お天気がよくなると乾くようになったんだと。
 それが天気予報になってよく当たるので、村の者も、明日の天気はどうだかという時は、平六さんに聞いてこいというまでになって、平六さんの天気予報といわれるようになったんだ。
 それが、いつのまにか殿様の耳に入り、そんなに天気予報が当たるんではお城によんでお抱えするとなって、平六さんは袴、羽織の二本差しのお侍になって、ほんとうに出世したんだとさ。

 平六さんは、こういう身分になったのはフンドシのおかげだってことで、桐の箱を作ってフンドシを入れて、大事にタンスにしまっておいたんだと。
 ある時、殿様がでかけることになったんで、平六に明日の天気を聞けと命令したんだと。平六さんがフンドシを入れた箱を開けてみると、昆布のようにまっ黒くなったフンドシが塩をふいてまっ白になっていたんだ。
 これを見た平六さん、殿様に、明日は大雪だと伝えたんだと。殿様は、土用の六月に雪が降るとは信じられなかったんだけど、平六のいうことだからと冬支度で出かけたんだと。だけど、やっぱりものすごく暑くて、頭が焼けるようになってしまったんだと。殿様はすっかり怒ってしまって、平六は国許へ帰せとなって、免職になってしまったんだと。
 それで、村の人たちは、出世したと思ったらもとの暮らしに戻ってしまったってことで、「もとの平六」になったな、と言ったんだと。
 今でも、ここらの人は、お酒をたくさん飲んでた人がいっとき飲まなくなり、そしてまた飲むようになった時なんかに、やはり「もとの平六になった」と言ったりするもんだ。


※「蔵王町史 民俗生活編」掲載の「もとの平六(話し手:佐藤良三さん)」に基づき、その内容・意味・趣旨に変更を加えることなく、文体修正・一部文章修正を行いました。
2010.6.8更新

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